いつか絶対に変わらなきゃいけないと知ったときあなたは何をしますか~「象の墓場」を読んで思ったこと

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人は今あるものが、当たり前にずっとあると思い込んでいることが多いと思います。

  • 住む家があって、食べるものがある。
  • 身体が自由に動く、ものが美味しく食べられる。
  • 明日、会社に行けば自分の仕事がある。
  • 給料日に銀行に行けば、給料が振り込まれている。

ごくごく当たり前のことかもしれないのですが、それは毎日奇跡が起こり続けそうなっているだけかもしれない。そして、当たり前のことがある日当たり前でなくなる。そういうことに気づいて、変化に対応していくことが生きていくってことなんだなぁと思います。

最近読んだ「象の墓場」(光文社)は、デジタル化本格的に始まり完全に移行していく1990年代~2000年代はじめで、その波をもろにかぶった企業の話です。

経営者や幹部にお勧めの本です

象の墓場 楡周平著 光文社文庫

永遠に続くのではないかと思われていた写真のフィルム市場が、デジタルカメラが発明された以降、徐々になくなってしまう様子が書かれています。この本を読むと、今ある仕事が明日ゼロにならないとは思うけれども、ゼロになる日は来るのかもしれないっていうことがよくわかります。

何らかの理由でたまたま一社が倒産するのと違います。技術の進歩によって新しい商品ができ、ユーザーがもはや古い商品を必要としなくなって、物を買わなくなるということです。同業種すべての会社が、もはや必要なくなってしまうのです。

そのひとつが銀塩フィルム。2017年の今では、デジタルカメラを買わなくても、スマホについているカメラで十分写真を楽しめます。

自分の職業に置き換えると、とても怖い現実です。でも、それはあるかもしれない。

私の会社でもお客さまに買ってもらえなくなるかしれない。それは営業方法や集客が悪いんじゃなくて、印刷もWebもこの世では必要なくなって、お客さまがお金を払う価値がないと判断してしまうことなんだな。

ここ数日、この本を読みながら心が痛くなっていました。

経営陣は銀塩フィルムの市場がなくなることを予測していたのに

物語は1992年から2004年までの世界最大のフィルム会社の栄光と衰退を、主人公の最上の目を通して描かれています。

写真業界の技術は長い間ほとんど変わることなく確立されていて、主人公が勤めるソアラ社は、1ドルで70セントの高収益を生み出していました。

ソアラ社では、実は1970年代の後半には、2010年までに銀塩の時代は終わり、デジタルの世界に完全にシフトするという内容の社内レポートが提出されており、経営者は先のことをわかっていました。だから、製薬会社を買収したり、デジタル製品を開発したりと新しい事業の柱を立てようといろいろ挑戦していました。

ただ、その取り組みは残念ながら甘かった。

取り組みすべてが、写真業界の常識の中で行われているところに甘さがあったのです。そして、寡占市場であるがため、自分たちが製品の価値をコントロールできてきたところにも甘さがある。繁栄しているまま、デジタルの世界に移行できるのではないか。そんな風に思う人が多かったんですね。

でも、デジタルに移行すると、1ドルで5セントの利益しか生まない事業になってしまい、それでは会社の規模を維持できなくなります。そうなると、配当金をもらえなくなる株主が出資先を変えるかもしれず、簡単に事業モデルを変えることができないのです。

レポートを読んでも、「高収益を出している今の事業がなくなることはない」という価値観を変えられない社員や幹部が多くいたことが、会社が傾いていった要因だと思います。

自分たちのビジネスが無くなることは40年前から経営者はわかっていた。それで業態変革を何度も試みるけれども、新しい事業はすぐには利益がでないどころか、赤字になることもあり、それでは株主を納得させられない。変えよう変えようとしても、昔からのしがらみで変えることができず、急激に進んだデジタル革命の中で消えていってしまったのは、失う怖さのあまり現実を見られない人の悲しさなのかもしれません。冷静に客観的にみると、目先の利益を捨てても会社が残って再び利益を上げられるようになった方がよいのではと思うことがあるのに、変わることを好まない関係者が多いと変わるに変われなくなってしまうのです。そのうちに、市場の条状況を読める優秀な社員は辞めてしまう。しばらく会社の中で奮闘する社員も、ことの重大さに気づいてやめてしまう。そうすると、どんどん会社の力が落ちていってしまうという負のスパイラルに陥ってしまいました。

私は、デジタル製品を担当していた、主人公のアメリカ人の上司が会社を去るときに言っていた言葉が心に刺さりました。

災害はいつやって来てもおかしくはない。明日か、一年後か、時間の問題で必ずやってくるものだと誰もが知っている。しかし、平穏無事である間に、その時のための蓄えを講じる者はまずいない。今までずっと無事でいられたんだ。何の問題もなくすごしてきたじゃないか。ほら一週間後の天気予報だって、嵐が訪れる気配なんてどこにもないじゃないかとかね。そして、大嵐が訪れ、川が氾濫し、家が流され、人命が失われて初めて慌てる。悲劇だと言ってね。

自分の持っている価値観は、ときどきチェックした方がいいかも

ソアラ社では、「写真は現像してプリントして現物を残すもの」と考え、それに価値があると信じて疑わなかった人が多くいました。写真の品質にこだわり、現物を残すことにこだわっていたので、デジタルの移行期でも、企業の都合ありきの中途半端な製品を開発し続けていました。

デジタルの世界では、写真は撮影したらその場で見るものであり、そのままスマホやデジカメに保存しているものに変わってしまいました。そうなると、過去の価値観では通用しなくなります。

この本で起こったことを、自社や自社に置き換えるとどうなるのか。考えた方がいいと思います。

たとえば、ホームページはパソコンで検索して見るものであったのに、だんだんスマホで移動中にSNSからのリンクでも見ることができるようになりました。

会社や家にいてパソコンで見る見やすさと、スマホで移動中に見る見やすさとでは、求められるのが違います。

そういう業界内の技術の進歩は、情報収集しながら勉強を続けることで対応できます。

ですが、203×年にはホームページはなくなると予測されたとき、Web制作会社の経営者はどうすればよいでしょう。ことが大きすぎてピンとこず、203x年までやはり何もしないかもしれません。困ったねといいながら、、、

本当は何を変えていくかという到達点を決めて、少しずつ取り組んでいくのがいいのでしょうね。

そして、その変える取り組みをするときには、改めて自分が持っている価値観を見直す必要があると思うんです。新しい世界で求められる価値観と一致しなければ、変える方向で努力してもそれは実を結ばないと思うから。

もうひとつ私が難しいと思うのは、個人単位であれば自分の意志で行動できるけれど、会社単位になるとたくさんの人の想いがあるので、自分の意志だけではどうにもならないことがあることです。

それでも、「変わるという意志を持って、行動し続けるのが経営者」と改めて思ったのでした。

 

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 この記事の投稿者

白藤沙織

Web・印刷の株式会社正文舎取締役。 Webプロデューサー 兼 ライター。ときどきセミナー講師。 コーチやカウンセラーの資格を持ち、仕事に活かしています。 ダンス・歌・演劇好き。4コマ漫画のサザエさんをこよなく愛しています。

営業をどのようにしたらよいかわからないときに、Webサイトとブログ、SNSに出会う。以来、情報発信を丁寧にして未来のお客様と出会ったり、お客様のフォローをしています。

仕事もプライベートも「自分の生きたい人生を生きる」ために、「自信や勇気」を届けられたらうれしいです。

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